Jichinsai & Cross-Cultural Event Case Study

新工場や事務所の立ち上げに際し、Groundbreaking Ceremonyを実施する企業は数多く見られます。特に海外から進出する企業の場合、自国の文化や慣習を取り入れたセレモニーを希望されることが少なくありません。

日系企業においては、日本ならではの「地鎮祭」や「起工式」を実施したいというご要望をいただくケースも多くあります。新たな事業の成功と工事の安全を祈願するこれらの儀式は、海外においても企業関係者や地域コミュニティとの結びつきを深める大切な機会となっています。

今回、JTB USAでは、日本からテキサス州へ進出される三甲株式会社様の地鎮祭プロジェクトを、KBD Group(鹿島建設株式会社の米国子会社)様からのご依頼によりサポートいたしました。計画段階から当日の運営まで一貫して携わる中で、海外において日本伝統の地鎮祭(Groundbreaking Ceremony)を実現するために、文化的な背景への理解や専門家との連携、そして現地参加者への配慮など、さまざまな工夫が求められました。

本記事では、本プロジェクトの事例をもとに、海外で地鎮祭を実施する際のポイントや、成功に導くための企画・運営の考え方についてゼロ周年のブログに沿ってご紹介します。

1. 目的の整理

新拠点の建設にあたり、お客様からは地鎮祭をテキサス州で実施したいとのご要望をいただきました。しかし、その目的は、日本国内で執り行われる地鎮祭を単に再現することではありませんでした。

今回のプロジェクトで重視されたのは、「日本企業として大切にしてきた文化や価値観を継承しながら、現地の参加者にとっても意義深く、共感を得られるセレモニーとすること」でした。

そのため、日本の伝統的な作法や精神性を尊重しつつも、現地の文化的背景や参加者の理解に配慮し、双方の価値観をつなぐセレモニーの実現を目指しました。

2. ステークホルダーおよび参加者の期待値の整理

今回の地鎮祭には、日米の三甲株式会社役員・社員の皆様をはじめ、取引先企業、建設関係者、行政関係者、さらには地元経済団体の皆様など、多岐にわたるステークホルダーにご参加いただきました。

それぞれの立場によって、式典に期待する内容や参加目的は異なります。日本側の関係者にとっては、工事の安全や事業の繁栄を祈願する日本企業らしい節目の儀式としての意味合いが強い一方で、現地の来賓にとっては、新たな投資プロジェクトの概要や地域経済への貢献、企業のビジョンを知る機会という側面もあります。

このように参加者ごとの期待値を整理することは、日米双方の参加者にとって意味のある式典を設計するうえで重要な出発点となりました。

3. メッセージ設計

本地鎮祭では、「安全祈願」という本来の目的に加え、三甲株式会社様の米国進出における想いやビジョンを関係者に共有することを重視しました。

日本企業として大切にしている伝統や価値観を尊重しつつ、現地の行政・ビジネス関係者にも伝わるよう、以下のようなメッセージを明確に設計しました。

  • 地域社会への貢献
  • 雇用創出
  • 持続的なパートナーシップ
  • 長期的な成長と地域との共生

日米双方のステークホルダーにとって意味のある場となるよう、文化とビジネスの両面をつなぐコミュニケーションを意識したメッセージングを行いました。

4. 体験設計

ステークホルダーの中でも、特に行政関係者や地元経済団体の方々は、日本文化に触れる機会が限られているため、日本国内と同じ形式の神事をそのまま実施するだけでは、儀式の意図や重要性が十分に伝わらず、結果として参加者のエンゲージメントが低下してしまう懸念がありました。

そこで、地鎮祭としての厳粛さや伝統を尊重しながらも、初めて日本の儀式に触れる方々にもその意義が伝わるよう、式次第や進行内容、案内方法を工夫しました。

単に神事を執り行うのではなく、「なぜこの儀式を行うのか」「どのような想いが込められているのか」を丁寧に伝えることで、文化的背景の異なる参加者にも共感いただける場づくりを目指しました。

地鎮祭の式次第と参加者体験設計のイメージ
Photo credit to KBD Group.

神事の説明タイミングと情報量の設計

地鎮祭にはさまざまな所作があり、それぞれに意味が込められています。しかし、すべての場面で説明を加えると神事本来の厳かな雰囲気が損なわれる一方で、説明が少なすぎると、日本文化に馴染みのない参加者は内容を理解できず、傍観者となってしまう可能性があります。

そこで、ご住職・バイリンガル司会者・企業担当者を交えた事前ミーティングにおいて、「どの場面で、どの程度説明するか」を綿密に検討しました。

最終的には、式典冒頭で地鎮祭全体の意義と流れを説明し、各所作の前には簡潔な一言を添える構成を採用しました。参加者が今何を行っているのかを自然に理解できるよう配慮しながら、神事の厳粛さと参加者の理解を両立させました。

式典の時間・テンポの設計

今回の地鎮祭はサンアントニオ郊外での屋外開催であったため、テキサス特有の気候や参加者の体力・集中力への配慮も重要な要素となりました。

また、アメリカのビジネスイベントでは簡潔で効率的な進行が好まれる傾向があり、長時間の式典に慣れていない参加者も少なくありません。

そのため、神事としての格式や必要な儀式は維持しつつも、式典全体が冗長にならないよう進行を設計しました。参加者が最後まで集中して参加できる適切な時間配分を意識することで、日本の伝統文化と現地のイベントスタイルの両立を図りました。

テキサスの屋外会場での地鎮祭設営イメージ
Photo credit to KBD Group.

会場設営および神事環境の整備

工事現場という環境の中での開催となったため、日差しや高温への対策としてテントを設置しました。加えて紅白幕も設けることで、日本式神事ならではの雰囲気を演出し、参加者の皆様にとって特別な式典であることが視覚的にも伝わるよう工夫しています。

テキサス特有の厳しい屋外環境を踏まえつつ、神事としての厳かさと、参加者の快適性・安全性の両立を意識しました。

さらに、ポータブルトイレの設置や車両動線の確保など、工事現場ならではのインフラ面にも配慮を行い、スムーズな運営体制を整えました。安全基準および行政対応についてはKBD Group様にご対応いただき、現地での安全性と運営性の両面を確保しています。

地鎮祭に使用する神具や備品の手配イメージ
Photo credit to KBD Group.

備品・神具の手配

神事は、三甲株式会社様がご手配されたご住職のもと、厳粛かつ滞りなく執り行われました。

神具をはじめとする各種備品については、アメリカ在住の神事専門家の助言を受けながら、現地調達と日本からの輸送を効果的に組み合わせることで、海外でありながらも日本の伝統や格式を損なうことのない環境を整えました。

当日の進行設計と文化翻訳の実践

司会者(バイリンガル)の役割は、単なる司会進行や逐次通訳にとどまりませんでした。

神事の各場面において、英語話者の参加者が「何をしているのか」だけでなく「なぜそれを行うのか」まで理解できるよう、必要に応じて背景説明を補いながら進行しました。

アメリカ人参加者の多くにとって神事は初めての体験であり、この「文化翻訳」が理解と共感を伴う参加体験を生み出す重要な役割を果たしました。

また、日本側・アメリカ側双方にとって違和感のない、自然で分かりやすい進行となるよう全体設計を行い、場の一体感を損なわない形で式典を成立させました。

式典終了後には、直会(なおらい)としてビュッフェ形式の交流会を設け、関係者同士がリラックスした雰囲気の中で交流できる場を創出しました。

これにより、儀式としての厳粛な時間と、マーケットエントリーに伴う関係構築・情報交換の場としての実務的なコミュニケーションの双方をバランスよく実現しました。

JTB USAが提供する価値

Groundbreaking Ceremonyや、文化的背景や理解が必要な類似のセレモニー(たとえば地鎮祭)は、単に会場や備品を手配するだけで成立するイベントではありません。

成功に導くためには、開催目的の明確化、関係者(ステークホルダー)の整理、参加者にどのような体験やメッセージを届けるかといった視点を踏まえた、戦略的な企画・設計・運営が求められます。

特に海外(米国等)において日本伝統の地鎮祭を執り行う場合には、文化的・宗教的な背景への理解が不可欠です。そのため、神事専門家による事前のアドバイスに加え、当日の進行においても専門家の関与が重要な役割を果たします。

JTB USAでは、企業の海外進出や新拠点開設といった重要なマイルストーンにおいて、イベントを単発のセレモニーとしてではなく、企業の価値観やメッセージを発信するコミュニケーションの機会と捉えています。

専門家との連携を含め、企画立案から当日の運営までを一貫して支援し、企業と地域社会、関係者をつなぐ意義ある場づくりをサポートしています。

アメリカにおける地鎮祭やGroundbreaking Ceremony、また各種周年事業の実施をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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